Rose Farm KEIJIの國枝啓司氏によって作出された和ばら「いおり」。
和ばらが自社での販売のみとなった2021年に迎え入れ、今年で2年目を迎えました。
和ばらは細く華奢な枝に、中大輪の花を次々に咲かせる印象がありますが、この「いおり」もまた多くのつぼみをつけ、頼もしく咲き続けてくれます。
この記事では私が実際にいおりを栽培する中で、気づいたことや失敗したことを紹介し、これから育てようと思っている方の一助となれば、またすでに育てている方からは少なからず共感が得られたら嬉しく思います。
華奢でありながら強健な和ばら「いおり」
もともとはF&Gローズとして販売された、「あおい」の枝替わりです。
「侘しい庵に、一輪この花が飾ってあると、空間が華やぐ。詫び寂びの中にある美意識を表現して。(Rose Farm KEIJI公式サイトより)」
いおりは和ばらの中でも人気品種のため、様々なホームページなどで美しい花容が紹介されています。見ているだけで溜息が出るほどに人々を魅了しますが、耐病性などが気になる方々も多いのではないでしょうか。実際に育ててわかった品種の特徴を記載しますので、ご参考になればうれしいです。
作出:2011年 日本に何があったか
作出は2011年、東日本大震災があった年です。またなでしこジャパンがサッカーW杯で優勝し、私が住む大阪府では府知事・市長選挙のダブル選挙で維新の会の橋下徹氏が市長に、松井一郎氏が知事に当選しています。
作出者:Rose Farm KEIJI(日) 國枝啓司氏
作出者はRose Farm KEIJI(日)の國枝啓司氏です。滋賀県に生まれ、父親が営むバラ園に就農。1993年には雅子皇后に「プリンセスマサコ」を献上されるなど、素晴らしい功績を持つ方です。その後、日本情緒を反映した和ばらシリーズを作出しています。
樹形:小型、半直立性シュラブ
樹形は小型、半直立性シュラブ(樹高80cm、横張り60cmくらい)です。コマツガーデンのサイト紹介では半横張り性で樹高100cm / 横張80cmと記載がありましたが、我が家の鉢栽培の苗はベーサルシュートがほぼ直立で発生し、横張りにはなりませんでした。細い枝にいくつもの中輪の花を咲かせるので、花期には少したわんで横張りになりますが、繊細なイメージのある和ばらの中では太めの枝ががっしりと花を支える印象です。狭いスペースで育てている方で、もし花期に垂れ下がるほど枝が伸びていれば、麻ひもや支柱などで支えてあげるのが良いと思います。
花期:中咲 四季咲き
花期は中咲で、大阪府の北寄りに位置する我が家ではだいたいピエールドゥロンサールが咲くタイミングと同時期の印象があります。そのため多くの多品種のバラたちと咲き揃う、扱いやすいバラだと思います。
また四季咲き性が強く、後述する耐暑性も強いため、春以降も次々と花を咲かせて長く楽しませてくれるバラです。
花径:中輪
花径は中輪(約7cm前後)です。春季は少し大輪で咲きますが、さすがに夏季は小輪(我が家では4cmくらい)となります。後述しますが、小輪でも美しいカップ咲きのため、非常に愛らしい開花を見ることができます。
夏季は摘蕾するのが株の成長には望ましいのですが、小輪のカップ咲きは、國枝啓司氏が考えている「草花のようなバラ」を体現しているようで、私はとても好きです。
ちなみに、いおりを始めとする和ばらのほとんどは細い枝に中大輪の花をつけるので、必然的に花が重みでうつむいてしまう傾向にあるのですが、我が家のいおりは支柱がなくても上を向いて咲いてくれます。そのため、低い位置に鉢を置いたり、地植えにしていても、身をかがめなくとも美しい花を観賞することができる点が、小型シュラブとして優秀だと感じます。
花色:グレイッシュブラウン
花色は灰色を帯びた、くすみのある茶色です。このグレイッシュな色合いが絶妙なのだという評価をよく聞きます。気温によっては白~薄茶色~薄ピンクを纏った野暮ったい感じに見えなくもないのですが、少し涼し目な気候の中では何とも言えない美しさを纏って、私の目をくぎ付けにします。
一方で色味が安定しないとも言えます。昔のバラにジュリアという茶色の美しいバラがありますが、私はジュリアの色合いにとても良く似ていると思っています、ご参考までに。
花形:カップ咲き 房咲き
花形はカップ咲きで、和ばら全般に言えるのですが房咲きとなります。そのためベーサルシュートの先端に群となって咲く様は、天然の花束のようです。
夏季は整った花容が少し崩れた何とも言えない「くしゃっ」とした貌になりますが、美貌に変わりなく、秋季は再びカップ型の美しい花形を見せてくれます。
香り:微香 / あまり香らない
香りは微香というか、公式サイトでも「あまり香らない」と書かれているように、特筆すべき芳香は感じられません。ちなみに私は全然香りを感じません。
ただ、私はティー系の香りをあまり感じないのですが、近所の数人のバラ友達は「めっちゃ良い香り!」と言うので、人によっては素晴らしい芳香なのかもしれません。
耐病性:和ばらの中では普通(タイプ2?)
耐病性は、和ばらの中では普通というか高めだと思います。バラの家的に表現すると、タイプ1~2なのではないかと思います。
これは私が最も愛する和ばらの「ひより」が耐病性に乏しく、かいがいしく世話をしないとすぐに「はげちゃびん」になってしまうのを見て比較しているからかもしれませんが、薬剤散布も年に2回くらいで、うどん粉病は完全に防げています。
黒星病には罹患するのですが、マルチングで防除できるかもかもしれません。
ちなみに前述しましたが耐暑性に優れ、夏もがんがんつぼみをつけます。
耐寒性はよくわからないというのが本音なのですが……
大雪が降った冬も露ざらしにしていましたが、問題なく春季に花をたくさんつけてくれたところから、ある程度の寒さも耐えられるのではないかと思います。
いおりのお迎えと植え替え
私は2021年に、Rose Farm KEIJIの受注販売会で購入をしました。
和ばらの園芸苗はバラ専門店にも卸されていない状況なので、もしバラ専門店などの在庫がなくなってしまったら、公式サイトにて購入する方法しかなくなります。
以前はABARRA Membersとして会員登録をすることで、受注販売会に参加することができました。
しかし今は、それができなくなっています。
F&Gローズとして手に入る頃が懐かしくなります。京阪園芸の苗はいろいろなご意見もあると思いますが、しっかりした接ぎ木苗が売られていたため、初期生育も良かったと今になれば思います。
下記の写真は私がお迎えした、いおりです。新苗のような細く柔らかい苗でした。
黒いビニールポッドに入っており、砂は川砂のようなさらさらした感じでした。
また、「おへやで育てるばら」や、ふるさと納税の返礼品としては今も会員登録なしで購入できるので、公式サイトで販売開始の連絡を確認するのが良いと思います。
6号鉢へ植え替え
苗が届いたのは9月だったため、根を崩さないようにして6号鉢へ植え替えました。あまり根は回っていませんでしたが、少しでも早く大きくしたいという気持ちが出てしまいました。根の張りが良くなるようにとバラ専門用土に植え付け、オルトランDXを撒いて日中は日陰になるところに置きました。
育てていて気になった点
和ばら全般に言えることですが、「華奢な枝にいくつもの花をつける」ことが特徴となります。株が弱っているときにもどんどんつぼみをつけていくので、咲き疲れるように枯れていく未来が垣間見える感じがします。
また、そもそも公式サイトから届く苗はほとんどが新苗のような細い株のため、初期成育は新苗に準じて摘蕾し、株を育てることに注力すると、その後の成長が逞しくなります。
初年度は地植えでなく鉢管理が安全かと思います。そして強い選定でなく、株が充実するまでは弱い選定で葉を残しつつ、光合成による成長の機会を確保することが望ましいと思います。
耐病性は和ばらの中では高い方のため、春前と秋前(我が家では3月と9月初旬)に消毒すれば、うどん粉病と黒星病を防除できています。
詳しくは以下の記事でも記載していますのでご参考になさってください。
最後に
日本情緒を体現する美しいバラ「いおり」、育ててみて感じたことを書いてみましたが、いかがだったでしょうか。
なかなかに希少品種となってきましたが、公式に購入することはまだできる状況ですので、気になった方のお役に立てれば幸いです。
なんだかんだ言っても、私は和ばらが好きです。庭の修景というよりはパティオローズとして、鉢に植えて大切に育てるのも良いと思いますが、少し庭が広めの方は、群生で地植えにしても美しい風景となると思います。
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