バラ栽培を始めたのは、折りしもコロナ禍にてステイホームが掲げられたころでした。YouTubeには多くの方がバラの育て方動画をアップロードされており、今も毎日観ています。
そのなかで、挿し木バラを他人に譲渡してはいけない、という動画を視聴しました。なんで?と思いながら観ていると、品種・ナーセリーを保護する観点から種苗法という法律で禁止されていることを知りました。
改正種苗法を調べて
2022年4月に改正種苗法が施行されました。「登録品種の時価増殖は一切禁止」という一文に「えっ、YouTubeでめちゃくちゃ個人で挿し木して動画アップしてるで!」と驚きました。
その後、農林水産省による「改正種苗法に関するQ&A令3年4月版」にて、「質問30 生産した収穫物や種苗等を他者に譲渡することがない、個人的又は家庭的利用であれば、自家増殖に許諾が不要という点は、令和4年4月1日の改正種苗法の施行後も変更がないのか」に対して「変更ありません」と記載がありました。
種苗法の解釈は、販売を目的としているかどうかである、という記載をしているインターネットサイトもありましたが、第二条4項で譲渡を禁止している旨の記載があります。友人間での受け渡しについてはいろんな解釈をする記事がありましたが、禁止なのだろうと見ています。
メルカリで売られる挿し木たち
Rose Farm Keijiの公式サイトで5万円/10万円のプラン登録を迷っていたころ、すでにインターネット通販での和ばら購入はどのショップも在庫なしと表示されていました。その中でYahooオークションやメルカリでは挿し木苗が販売されていることに気づきました。
園芸店にて接ぎ木苗で販売されていたころを知る身としては、細い枝が1本ちょろりと仕立てられた商品に、1,000円以上の値付けがされているのを見て、仰天しました。
「えーっ、これにこんなに払うの?誰が買うの??」となったのです。
そして、いくらRose Farm Keijiが自社の固有種を守ろうとした体勢であっても、いくらでも抜け道があり、無法地帯が拡張していることを知りました。
「挿し木ちょうだい」と言われ……
僕も、ご近所の方から「和ばらきれいねえ、挿し木にしてちょうだいよ」と声をかけられ、どうしたものかと迷いました。
僕とその人が黙っていればわからないこと。そして僕の実家はかなりの村社会が残存する古い地域です。断った時に「みなとくんから断られたの!」なんてご近所にふれこまれたら、村八分という社会的な死につながります。
「うまく根がついたら、差し上げますね」というのが精一杯でした。そしてそんなときに限って、挿し木がうまくいってしまうのです(なんでだよ……)。どうしようどうしようと思っていたところ、その人から「実はね、娘がメルカリで見つけたから、買っちゃったの。だから大丈夫よ」と報告され、ほっとしました。
今振り返ると、その人も、ご近所さんも何らかの野菜や果物、花きを育てている農家です。種苗法について僕よりも知っている立場であると思います。だから躊躇する僕の心などお見通しで、気を遣って「メルカリで買ったの」と言った可能性もあります(お庭にお呼ばれしたときに何らかの挿し木苗が鉢に植わってましたけど……)。
種苗法の目的と背景を知ってバラを楽しむ
種苗法の第一条には、「品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする」とあります。大きな枠組みから見ると、個人間での挿し木苗に関しては小さな項目として見られるかもしれませんが、ルールを守ることで、ナーセリーさんがより良い品種をどんどん世に出してくれたなら、いちガーデナーとしても嬉しいことだなと思います。
和ばらだけでなくイングリッシュローズの廃盤品種など、手に入りにくい品種もありますが、ルールを守って楽しむことができたらいいなあと思います。
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